« やかたの想ひ出 | トップページ | 読み違い。 »

2006/08/09

地獄八景亡者戯

「じごくばっけいもうじゃのたわむれ」と読みます。
「はっけい」ではなく濁るのだそうです。

ちょっと前から第二期マイ落語ブームが始まったんですが、
一番嵌ってるのがこのネタです。
一時間を越える上方落語きっての大ネタで、
米朝のDVDでは終わって立ち上がる時よろけてたり、
枝雀のDVDは途中で休憩が入ったりしてます。

タイトルも大仰だし、米朝の十八番と聞けば、
よっぱど凄い物語なのだろうと身構えますが、内容は実に他愛ない。
吉朝のCDでは枕で
「長い話なので余分な部分を削ろうとしたら何も残らなかった。」
と云っていますが、正にその通り。

地獄への珍道中をオムニバス風に描いた噺なので
起承転結も何もあったもんじゃありません。
鯖にアタって死にながらも食い残しを悔やんでるヤツとか、
道楽を極めて酔狂で地獄ツアーに来た若旦那一行とか、
生前のケッタイな悪行が祟って地獄に来た連中とか、
一癖も二癖もある連中が繰り広げるドタバタ劇です。

普段米朝は「あいも変わらず古いお噺を…」で始まり
社会や貨幣の変化で古い噺は演りにくくなったと嘆きつつも
できるだけ江戸や明治の世界観を崩さない様にしてはります。
でも、地獄八景については時事ネタを織り込む形を取ってはります。
何でも米朝が若い頃、文の家かしくにこのネタを教わった時、
余りに古臭く時代にそぐわなくなってて、誰もやらなくなっていたのを
時事ネタを入れる事によって蘇らせたのだそうです。。
今ではこの米朝のヴァージョンが下敷きになり、
色んな噺家が趣向を凝らして時事ネタオンパレードに仕上げてます。

だから聴きくらべてみると楽しい。

Zigoku01
本家本元の米朝のDVDは平成2年収録なので、ネタも比較的新しい。
人間国宝の落語の中にUSJの話題とかが出てくるのは新鮮です。
同じ米朝でも1968年に収録したCDを聴くと、
殆ど流れや節回しは変わっていませんが、
時事ネタは当時のモノでした。
キャバレー、トルコ、コールガールなんて言葉が出てきます。

この時事ネタに一番リキが入ってるのは文珍です。
創作落語はお家芸だし、ニュース番組の司会とかもしてるしで、
水を得た魚の様にネタを連発してます。
あ、魚がネタを連発してるのは見た事ありませんが…。
平成14年収録のCDゆえ、政治ネタも新しいです。
これが評価されて同年の大阪舞台芸術大賞を受賞したとか。
でもちょっと下世話で悪乗り気味に感じるのは、
文珍のキャラに対する個人的な先入観が原因かな?

って事でこの噺は時事ネタでいつも新鮮…、と思いきや、
サゲが時代遅れのままなのでした。
詳しく書くとネタバラシになるので割愛しますが、
説明がなければ今では誰もわからないです。
で、枝雀のDVDではこのサゲを差し替えてます。
誰にでもわかる明快なサゲなんですけど、
これを採用してる人は他にいるのかなぁ?

Zigoku02最後に毛色の違うところで
演劇による地獄八景を紹介します。
松尾貴史主催のアガペでの舞台。
米朝の落語をベースにしながらも
大胆な現代劇に作り変えています。
随所にギャグが散りばめられ、
てんやわんやの展開になっています。
絶対に元ネタを知っておいた方が
楽しめると思います。
「その道中の陰気なこと。」
このフレーズだけでもニヤニヤ。

|

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 地獄八景亡者戯:

コメント

コメントを書く