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2008/01/27

CD&DVDで楽しむ落語 その1

落語は寄席が生を観るのが一番だとは思いますが、
CDやDVDで何度も楽しむのもありでしょう。
その辺は音楽とも共通してる気がします。

クリック買いした落語のCDやDVDが溜まってきたので
思いつくままに好きなソフトを取り上げていこうと云う企画です。
関西人なので上方落語中心になりますが、ご容赦下さい。


□けんげしゃ茶屋/桂米朝
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■特選!!米朝落語全集 第十三集(東芝EMI)[DVD]より
「けんげしゃ」とはゲンを気にする人の事だそうです。
家族揃ってけんげしゃの茶屋がありまして、
そこにいちびりの旦さんがやってきて、
正月早々縁起の悪い事をしまくると云う噺です。
出てきたおせち料理にいちいち変な意味をつけたり、
友達に葬礼の行列の恰好で越させたり、
お茶屋の一家を翻弄しまくります。
そこへ何も知らない幇間(太鼓持ち)が
「おめでとうございます。」と入ってきて、
しくじってしまう、と云う話の流れですが、
面白いのは旦那の巧みな"反"縁起担ぎ。
子孫繁栄を表す数の子を貧乏人の子沢山と揶揄し、
ニシンの昆布巻きを死人の棺巻きと聞き違える。
結構登場人物が多いんですけど、
米朝は見事にキャラクタを演じ分けています。
旦那の悪ふざけにうろたえる茶屋の夫婦と
ヒステリックになる娘芸者の反応の違いが面白い。


□遊山船/桂雀三郎
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■雀三郎の落語その5(東芝EMI)[CD]より
大川の夕涼みにきた喜六と清八。
橋の上から大川を行き交う屋形船を見て、
喜六はいきなりオオボケをかまします。
「上流で大水があったんかいな?ぎょうさん家が流れてきてる。」
「あほか、これが大屋形やがな。」
「おおやかた、って、こないだ清やんが金借りに行った…。」
「それは親方や。いらんとこで恥じ掻かすな。」
モノを知らん喜六がボケまくり、
清八が色々教えながらツッコミを入れる。
付け足し程度の展開はあるものの、
メインは二人のやりとりを楽しむだけの噺。
個人的に雀三郎の演じるアホで憎めない喜六が大好きです。
特に"舞妓の振袖に南京豆を入れたら食いにくい"のやりとりは
何度聞いても笑ってしまいます。
って云うか、この部分を聞く為にだけこの噺を聞いてるかも。


□幽霊の辻(ゆうれんのつじ)/桂枝雀
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■桂枝雀落語大全第十八集(東芝EMI)[DVD]
小佐田定雄作の創作落語。
その日の内に堀越村まで手紙を届けなければならない男が
峠の茶屋でお婆ンに道を聞きます。
するとお婆ンは麓に見える池を指差して説明してくれるんですが…。
「ここから見えるあの池が水子池と云うんじゃ。
子供が生まれてすぐ死んだり、死んで生まれたりしても
貧しい村じゃで、弔いをする余裕なんてありゃせんのじゃ。
みんな人知れずこの池に沈めたんじゃそうな。
日が暮れになると赤ん坊の泣き声が聞こえたり、
小さい子供が池で遊んでると引き摺り込まれたりするとか…。
一本道じゃからその池の横を通らんといかん。」
「何でわざわざそんな話するねん!
で、水子池を過ぎたらすぐに堀越村かい。」
「ええ、そのむこうの森に首なし地蔵さんがあって…。」
お婆ンは首なし地蔵のいわれを延々と話し、
更に父追橋、幽霊の辻とみちすがらの心霊スポットを
片っ端から説明していくのでした。
すっかり恐怖モードになってしまった男が
提灯片手に怯えながら堀越村に向かっていく、と云う噺。
創作モノだけにストーリーはよくできています。
後半の恐怖に怯えながら森の中を進む男の姿を
枝雀はリアルに演じています。
大人になっても、夜道を一人で歩いてる時、
怖いと思ったら、怖いもん。


□掛取り/桂小米朝
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■桂小米朝落語の世界4(東芝EMI)[CD]より
掛取りとは商人が売掛金の回収をする事、転じて回収人の事。
昔は味噌や醤油でもツケで買えてたんだそうで、
支払いは節季毎にまとめて支払えばよかったらしい。
しかし、毎月のクレジットカードでさえ予想外にかさんだりするのに、
節季毎となると支払えなくなる事も多かったんでしょう。
まあ、昔はのんびりしてたので、払えなければ次の節季に、
となる訳ですが、さすがに大晦日は集金する方も必死です。
一年の残高を客の家まで集めに回る事になります。
客の方も次々押し掛けてくる掛取りをあの手この手で追い払う、
とまあ、この鬩ぎ合いを面白可笑しく描いたのが落語「掛取り」です。
主人公の男とその奥さん、今年も沢山の買掛金を抱えてます。
去年の大晦日は死んだふりをして逃れたけど、同じ手は使えない。
で、掛取りの趣味に合わせた言い訳をして、
気分よくして返す作戦に出ます。
芝居好きには芝居の真似事で対処し、
相撲好きには相撲取りの駄洒落で誤魔化したりします。
ここで落語家それぞれのオリジナリティが出てくる訳ですが、
桂小米朝はクラシック音楽で駄洒落責めをするんですね。
バッハやワーグナーやベートーベンなどの有名どころだけでなく、
ヤナーチェクやクセナキスまで出てくるので、
どれだけのお客さんが理解出来てるのか不安になります(笑)。
あとキダタローはクラシックの作曲家ではないと思いますが、
ま、浪花のモーツアルトって事でOKですか。


□天災/桂吉朝
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■特選吉朝庵(東芝EMI)[DVD]より
落語でひいひい笑ったのはこれが初めてです。
「つる」や「子褒め」や「質屋蔵」の定吉などと同じく、
アホが伝言ミスをして訳の分からん話をするパターンなんですけど、
「天災」に関しては喧嘩っ早い主人公が心学者のところで諭された話を
見識者ぶって友達に話す、その雰囲気が堪らなく可笑しいのです。


今回はこの辺で。

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