時々、無趣味な人と出くわすことがあります。
「単身赴任になって休みの日が暇で暇で。
なんか趣味を見つけないとなぁ…。」
特に、この手の話を数人から聞いた記憶があります。
でも趣味って、そうやって見つけるものなのかなぁ…。
おそらく無理して探した趣味って長続きしない気がします。
私の中での趣味の定義は「価値観を狂わせるもの」です。
金銭的にもそうですし、時間や手間暇に関してもそう。
つまり、そこから得られる満足度が高ければ高いほど
他を犠牲にする事を厭わなくなってきますもん。
そこで、遥か記憶の奥底に埋もれてる初歩の経済学の知識で
分析してみる事にします。
例えば、AとBの2つの消費財があったとします。
漠然としていてはわかりにくいので、
Aをビール、Bを焼き鳥とします。
財布の中に自由に使えるお金が5万円もあれば、
好きなだけ呑んで、好きなだけ食って、
満足して店を出る事ができるんでしょうが、
財布の中に3000円しかなかった場合はどうします?
恐らくみんな頭の中でそろばんを弾きながら、
ビールと焼き鳥のバランスを考えながら注文して、
ほろ酔いポイントを見つけようとする筈です。
ビールは一杯目がウマい。
キンキンに冷やした下面発酵ビールを愛する日本人には常識。
しかし、二杯目に得られる満足度は一杯目よりも確実に下がる。
三杯目、四杯目と杯を重ねるにつれて、
一杯あたりの満足度は減っていきます。

消費財を1単位増やして増える効用を限界効用と云い、
増やせば増やす程、得られる満足が減っていくことを、
限界効用逓減の法則と呼んでいます。
やきとりに関しても同様です。
一串目よりも二串目、三串目と満足度は減っていく。
で、ビールとやきとりを組み合わせて、
同じ効用が得られるポイントを結んだ線を
無差別曲線と呼びます。
別名の「等効用線」の方が意味としてわかりやすいと思います。
これは必ず原点に対して凸の右下がりの曲線となります。

上図にはグラフが3つありますが、それぞれの線上では
どの点を取っても、効用が同じ事を示しています。
また、これは原点から遠いほど効用が高い事を意味しますので、
緑よりも青、青よりも紫の方が効用が高い事を表しています。
例えば

青の無差別曲線上では、
「ビール2杯とやきとり4本」の組み合わせと
「ビール1杯とやきとり7本」の組み合わせとは
同じ満足度が得られる事を示しています。
また、別の例ですと、

同じ「ビール2杯」でも、
「やきとり2本」よりも「やきとり4本」の方が満足でき、
「やきとり4本」よりも「やきとり6本」の方が満足できると云う
あたりまえの事を表しております。
これに絡んでくる予算制約線の方はわかりやすいです。
予算内でビールと焼き鳥をどう組み合わせられるかの線。

小学生レベルの算数ですね。
本当はビール1.25本とかやきとり2.33本などはありえないので
グラフは階段状になるのですが、大目に見て下さい。
これらの事を踏まえて、予算内で最も高い効用を得られるのが、
二つのグラフの交わる点だと云えます。

これを最適消費点と呼びます。
見た目がよれよれの呑兵衛も瞬時にこのポイントを計算し、
注文していると云われています。
話は長くなりましたが、趣味の価値観の話に戻ります。
きっと趣味に対する金銭感覚と満足度の関係は
上のモデルと比べて大きく歪んでるのではないかと思うのです。
そこで、音楽好きのS君がCDを闇雲に買い捲る行動を例に挙げて
分析してみることにしましょう。
彼の消費行動は下の模式図の通りです。

って、何のことやらわからないと思いますので説明しますと、

X軸にCD、Y軸にそれ以外全ての消費財、
そしてZ軸に効用を置いています。
で、CDに対しては
「いくら買っても効用は逓減していかない。(=買えば買うほど満足)」
つまり右肩上がりの正比例のグラフになるのではないかと。

ところがそれ以外のモノを消費しても効用に結びつかない。
図で示す横這いのグラフです。
実際には食べ物や酒などでは効用を得ておりますが、
CD偏愛度が極度に進んだ状態とご理解ください。

で、XY面と平行にスパッと切ります。

これは、赤の面上にある効用が全て等しい事を表します。
それよりも上の面でスライスすると、

より効用が高い事を示しています。
この立方体を上から見るとこうなります。

この赤と青の境界線が無差別曲線と云う事になります。
本来なら右肩下がり、原点に対して凸である筈の線が
全くのx=aの直線になってしまっているではありませんか。
これに予算制約線を合わせてみます。

先に述べた通り、予算制限線と無差別曲線の交点が
最適消費点と云う事になります。
これをみると、Y軸の数値に関わらず
最適消費点が決定している事がわかります。
闇雲にCDを買い捲るS君の一見不可解な行動も
実はちゃんとしたミクロ経済学に基づいているのです。
しかし、本当に趣味にのめり込むと
更に高い効用を求めて、生活費を切り詰める行動に出ます。

ここまで行くと、人はマニアと呼んでくれます。
冒頭に述べた
「単身赴任になって休みの日が暇で暇で。
なんか趣味を見つけないとなぁ…。」
ってボヤいてる程度にしておいた方が
本当は幸せなのかもしれません。
長々と失礼しました~。