きいこ&せいやん
落語の世界って古臭いと云えば古臭いんですけど、
のんびりした時代のノホホンとした人々の絡み合いが実にいい。
みんな貧乏なんですが、人と差をつけて裕福になろうとはしない。
身の丈に合った生活をエンジョイしてる感じなんですね。
せわしい現代社会で闇雲な向上心や転落の恐怖に追われて
自分に鞭打ってセカセカ働いてる現代人には憧れのスローライフ。
そんな落語の世界の登場人物に関するちょっとしたお話を。
上方落語を聞いてはる人なら誰でも知ってる事ですが、
色んな噺に登場してくる人物が意外と共通しているんですよね。
これを知っておくと、初心者が上方落語を聞く時にわかりやすいかも。
一番有名なのは喜六と清八。ニックネームはきぃ公(きぃこ)と清やん。
長屋を舞台にした噺や旅モノで頻繁に出てきます。
弟分の喜六がボケで兄貴分の清八がツッコミです。
しかし、喜六もいかんともしがたいアホではなく、
時として清八を困らせるくらい頭が切れる事も。
更にもう一人、源兵衛を加えた三人組の場合もあります。
源兵衛は他の二人よりもちょっと年上でしっかりしている事が多いです。
それから町内の相談役的なご隠居さんは大抵甚兵衛さん。
但し、人から慕われてる場合と嫌われてる場合があります。
相談役と云えばヅク念寺の和尚もかなりの登場頻度です。
あと女性人としては喜六の奥さんは大抵お咲さん。
しっかり者で天然の旦那を尻に敷いてます。
その他、脇役陣では徳さん、宗助はん、お松さん辺りでしょうか。
徳さんはずる賢く、宗助はんは弄られキャラ。
お松さんは喜六の奥さんとして出てくる場合もあり、
雀のお松、雷のお松と別名を持つ程のおしゃべりです。
あと、笑うのはエキストラ的に出てくる長屋の連中です。
風呂屋のゆぅ公、金物屋のテツ、畳屋のいぃ公、牛屋のうし公、米屋のよね公。
むっちゃええ加減(笑)。
ただ床屋の磯七(磯村屋と呼ばれる)だけは別格でイケメン。
それから商家を舞台にした噺もかなりあります。
旦那と若旦那と番頭のキャラクター付けは噺によってかなり変わります。
旦那がお茶屋遊びの鉄人だったり、浄瑠璃に狂ってたり、
若旦那が身代を潰すくらいの道楽だったり、恋煩いで寝込むくらい繊細だったり、
番頭が旦那思いの良い人だったり、店の金を誤魔化して遊び狂ってたり、
かなりの格差があります。
名前が付いてるのは若旦那くらいで、大概の場合、作次郎。
あと、丁稚の定番は定吉。かなり抜けてます。
常吉も時々出てきますが、定吉よりはしっかりしてるかな。
女子衆(おなごし)と云われる女性の使用人も名前はほぼ固定で、
お竹どん、おもよどん、おなべどんあたりが一般的です。
中でもおなべどんは田舎の訛りが激しく相当不細工。
また母屋に出入りしている手伝い(てったい)職は又兵衛か熊五郎です。
どちらかと云うと熊五郎の方が役に立つ手伝い職かな。
最後にお茶屋や女郎屋が舞台となった場合。
芸妓、舞妓、女将、おやまなどの名前はあまり決まりがない様です。
その中でアイドル的存在はやっぱり小糸でしょう。
生きて登場する噺は「立ち切れ線香」くらいしか思いつきませんが、
その印象は圧倒的です。
若旦那に惚れて惚れて、恋文を書きながら死んでしまう。
涙なしに聞けない噺です。
幇間(太鼓持ち)は一八(いっぱち)、茂八(しげはち)と相場が決まってます。
大抵の場合、向こう先の見えない軽率な行動でしくじります。
思いつくままあれこれ書きつくねましたが、
全体としてはキャラクター付けが明確になってる劇団の様な感じです。
その方が噺家も役作りをやりやすいでしょうし、
お客さんも理解しやすいんでしょうね。
但し、これらのキャラが全員出てくる事はありません。
もしそれを演じわける事ができたら、天才噺家ですね。
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コメント
同じキャラクターが色々な役で出てくる手塚漫画は
上方落語の流れを汲んでいるのでしょうか。
投稿: まんぞー | 2008/12/04 17:38
■まんぞーさん
>同じキャラクターが色々な役で出てくる手塚漫画は
>上方落語の流れを汲んでいるのでしょうか。
どちらかと云うと宝塚歌劇の流れですよね。
サファイア、好きだったなぁ…。
ツンデレの元祖ですね。
投稿: しほたつ | 2008/12/05 09:00