図書館の自動貸出が便利なので、
少し読書熱が上昇中。
■空中ブランコ/奥田英朗
奥田英朗は好きな作家です。
ストーリーテラーとして魅力的です。
中でも連作短編が巧い印象があります。
この作品は精神科医伊良部一郎シリーズの二作目で、
直木賞を受賞した作品。
急に空中ブランコで失敗するようになったサーカス団員や
まともにボールが投げられなくなった野球選手、
義父のカツラを引っぺがしたい衝動に駆られる医者等、
ちょっとしたきっかけで心を病んでしまった人々を
伊良部医師が治療していく話なんですけど、
この男が規格外の変人。
まともな治療などほとんどしていないし、
時には犯罪すら犯します。
それでも結果的には患者の心の障壁を取り去って
病気を治してしまうんですね。
アニメ化もされているようですが、
画像を見たところ、原作のイメージとは大きく異なる様子。
そう云えば、一作目の「インザプール」も映画化されてましたが、
こちらも監督の三木聡の色に染め直されてる感じでしたね。
■誰にも見えない/藤谷治
私はかなり藤谷治の作品を読んできますが、
「船に乗れ!」の次に来るくらいの名作ではないかと思うのです。
少女の日記の形で物語が進む。
日記ならではの心の吐露、迷い、葛藤などがリアルに綴られる。
個人的には母親の駄目さ加減が絶妙で好きです。
ネタバレになるので書きませんが、最後の方もかなりいい。
■Phantom/羽田圭介
長期株式投資で利益を生み出し続ける理想のシステムを
構築しようとしている女性が主人公。
恋人はそれには否定的な考えを持っていて、
生きた金の使い方をしなければ意味がないと説く。
しかし、その彼が怪しいセミナーに傾倒していき、
カルト宗教まがいの集団の中に飲み込まれて…。
「豊かさとは何だろう。」
みたいな分かりやすい教訓も含まれているが、
「人生のどの時点が幸せだったら、いい人生なんだろうな。」
と、読みながら考えてしまいました。
■飢餓同盟/阿部公房
図書館で借りた本の合間合間に、少しづつ読み進めた蔵書。
高校時代以来の再読になる筈なんですが、全く記憶になし(笑)。
理想の社会を作るため革命を起こそうと企てる主人公。
しかし、高い理想とは裏腹に、計画はかなり杜撰。
集められた飢餓同盟のメンバーも全く結束力がないし、
能力がどれだけあるのか分からない人々。
絶対に上手くいく筈がない。で、案の定…。
廃車になったバスで生活する人が出てきますが、
安部公房の描く時代の空気感が好きです。
■コロナと潜水服/奥田英朗
これは怪談と云っていいんでしょうか。
霊にまつわる短編集ながら、どれも怖くない。
「パンダに乗って」はホロリと泣かせる秀作。
ちょっとこのペースでは読めない事情が出てきたので、
一気に熱が冷めそうです。
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