読書熱 2024年10月。
■昭和の犬/姫野カオルコ
■いちご同盟/三田誠広
■螢川/宮本輝
■神戸・続神戸/西東三鬼
■女生徒/太宰治
「昭和の犬」は直木賞受賞作。
だけど、大衆文学と云うより、純文学なテイスト。
私は犬が苦手なのですが、
小さい頃、近所の犬に噛まれたから。
この物語でも昭和の犬は外飼いだったり、
放し飼いだったりしている。そんな時代の話。
犬が主役ではなく、主人公は滋賀出身の一人の女性。
突然理不尽な理由で怒り出す父親を「割れる」と表現。
見事ですね。リアルな感覚として伝わってきます。
主人公は傍目には決して幸せではないのですが、
本人は幸せだったと云うシーンが印象的。
「いちご同盟」は「僕って何?」の三田誠広の作品。
正直云うと、あまりにも陳腐な設定なので
「マジか。」と思いました。
主人公は目立たないピアノを愛する文化系の高校生。
同じ学校の野球部の四番でエースの人気者に
いきなり声を掛けられる。
今度の試合をビデオに撮って欲しいとの事。
難病の幼馴染の美少女に見せるためだと。
1990年の作品だと云う事を考慮しても
この設定はベタだったんじゃなかろうか。
ところが物語が進むにつれて、
主人公の心の闇の部分が見えてきます。
「螢川」は芥川賞受賞策。
文庫本には表題作の他に「泥の河」も収録。
個人的には「泥の河」の方が印象に残った。
戦争の爪痕の残る大阪が舞台になっています。
安治川近くのうどん屋の子供が主人公。
川に浮かべた舟の上で生活する姉妹と友達になる。
舟の上では母親が客を取っていて…。
「神戸・続神戸」は何とも不思議な物語でした。
西東三鬼は新興俳句運動で活躍した俳人で、
この作品は自叙伝らしい。
彼は大戦の頃、神戸のホテルで暮らしていたらしく、
そこの住人たちのエピソードを書いています。
語り口が飄々としているだけに、逆に生々しい。
「女生徒」の角川文庫版は太宰治の女性語りの作品を
十四編収めた構成になっています。
女性の心理を描けているのか、私には分かりません。
更に"当時の女性の"心理となると、分かろう筈もない。
今の物差しで測ると違和感があり、色々読み誤ってしまう。
あと、読んでて気になったのは自殺がチラつく事です。
| 固定リンク
コメント
西東三鬼は恥ずかしながら全く知らず、ウィキりました。岡山から東京に出て歯医者になったあたりで、「神戸はどこに絡むねん」と訝しく読み進めたら、異人館のあたりに暫く住んでいたんですね。なかなか波乱万丈な方のようです。ところで、毎回不思議ですが、本のチョイスが多岐にわたっているのは、ランダムですか?
投稿: Salty | 2024/10/24 22:25
■Saltyさん
ネットで色んな賞の受賞作を調べたり、
色んなキーワードで検索したりして適当に選んでます。
今回は関西ゆかりの作家を調べて
適当に選んだものが多かったです。
太宰治以外はそうですね。
三田誠広はコピーのミタの一族だそうです。
投稿: しほたつ | 2024/10/25 06:04