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2024/11/28

読書熱 2024年11月中下旬。

11月後半も纏まりなくアレコレ読みました。
■山の音/川端康成
■飛ぶ男/安部公房
■スター/朝井リョウ
■流浪の月/凪良ゆう

「山の音」は川端康成の傑作と云われる作品。
すみません。川端康成を初めて読みました。
終戦後の鎌倉を舞台にした物語で
主人公は六十二歳の男です。
おっと、年齢がほぼ私と同じですよ。
老いや死を感じさせる描写が随所に出てきて
ちょっと凹みましたが、
当時と今とでは六十歳の位置づけが違う。
更には、女性の社会的な地位も今とは違う。
当然、当時の常識の中で書かれている訳で、
今の価値観で読むと酷い内容もちらほら出てきます。
鎌倉の情景を美しく描きながらも、
物語自体は同居の息子の不倫問題が中心です。
そこに息子の嫁に対する淡い恋愛感情も絡んできます。
もっと高尚な話かと思っていました。
ウィキペディアによると
"ノルウェー・ブック・クラブ発表の
「史上最高の文学100」に、
近代日本の作品として唯一選出された"
らしいです。


「飛ぶ男」は安部公房の死後、
ワープロのフロッピーから発見された未完の長編。
それを残された状態のまま本にしてあるので、
安部公房ファン以外は読む意味がないかも…。
タイトルの"飛ぶ"なんですけど、
これは比喩的表現ではなく、本当に"飛ぶ"です。
空を飛ぶ男が出現するところから話が始まります。
不条理な設定、癖のある登場人物、正に安部公房。
最後の方は文章が途中で途切れていたり、
メモ程度の単語が並んでたりして、
これから面白くなりそうなところで終わります。
もう一作「さまざまな父」が収録されていますが、
これは恐らく「飛ぶ男」のエピソード0的な作品かと。
父親から渡された薬で飛ぶ能力を身につけた男の話。
安部公房が死ぬ直前に執筆していた作品との事。
未完です。

「スター」は朝井リョウらしい社会の切り取り方だと思いました。
学生時代共作の映画で賞を取った二人の若者が主人公。
一人は幼い頃から祖父に映画の素晴らしさを教えられ、
大学を卒業して、有名な映画監督の組に入ります。
一方、もう一人は島で育った直感的な才能を持っていて、
正統な路線は進まず、色々と渡り歩いているうち、
ネットの動画作成に携わっていきます。
深く作り込んでいく映画と、粗製乱造の動画の世界の対比。
更には傾いていく映画業界と爆発的に伸びていくネット動画。
違う道を進んだ二人を描いた力作。
…なんですけど、個人的にはあまり好きな作品ではなかったです。
作者の思う事を複数の登場人物に代弁させている感じで、
男性も女性も全部朝井リョウの分身にしか思えないんですよね。
みんな理屈っぽく理路整然と自分の考えをツラツラと述べる。
作者の云いたい事があり過ぎて、それを全部書きたくて、
会話中心に話が進んでいくシーンが多い。
気になったのは鍵括弧付きの台詞と鍵括弧なしの台詞の多様。
例えば「これは○○○だと思う。」と云った後に、
鍵括弧なしで、そうは言ってもなかなかね、などと独り言っぽく
付け加える事で、臨場感を出そうとしているんだと思います。
しかし、これが何十回も出てくると、正直鼻につきます。
比喩表現もちょっとキラキラし過ぎてて苦手かも…。

「流浪の月」は本屋大賞を受賞し、映画にもなった作品。
孤独な少女とロリコン大学生の出会いは二人にとって幸福で、
決していかがわしいものではありませんでしたが、
世間の目には誘拐監禁事件の加害者と被害者にしか映りませんでした。
十五年の時を経て二人が再会してからも、周りの反応は変わりません。
ネットや週刊誌が振りかざす正義感に傷つけられ続ける二人。
ハッピーエンドを望みながら読み続けました。

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