書籍・雑誌

2024/10/25

読書熱 過去履歴2023年9月~2023年12月

過去読んだ本の記憶が曖昧なので、
このブログの記事を検索して判断する事も多い。
今朝、図書館の本を切らしてしまったので、
通勤用の本を蔵書から選ぶことにしました。
「密会/安部公房」を検索したらヒットしなかったので、
鞄に入れて出掛けました。

電車に乗って読み始めてみると、何だか鮮明な既読感がある。
自分の本なので過去に読んでいるものが多いのですが、
安部公房は高校生の頃に嵌った作家ですから、
その頃の記憶がこんな鮮やかな筈がない。

慌ててもう一つのデータベース、読書メーターで確認してみたら、
案の定、去年の10月に読んでいた事が判明。

どうやら去年の9月以降、blogはパリちゃんの話題で埋め尽くされて、
その頃に読んだ本の記録を飛ばしていたようです。

これからの事もあるので、履歴だけでもアップしておこう。
■エディプスの恋人/筒井康隆
■密会/安部公房
■薔薇販売人/吉行淳之介
■戦争はなかった/小松左京


| | コメント (2)

2024/10/23

読書熱 2024年10月。

■昭和の犬/姫野カオルコ
■いちご同盟/三田誠広
■螢川/宮本輝
■神戸・続神戸/西東三鬼
■女生徒/太宰治


「昭和の犬」は直木賞受賞作。
だけど、大衆文学と云うより、純文学なテイスト。
私は犬が苦手なのですが、
小さい頃、近所の犬に噛まれたから。
この物語でも昭和の犬は外飼いだったり、
放し飼いだったりしている。そんな時代の話。
犬が主役ではなく、主人公は滋賀出身の一人の女性。
突然理不尽な理由で怒り出す父親を「割れる」と表現。
見事ですね。リアルな感覚として伝わってきます。
主人公は傍目には決して幸せではないのですが、
本人は幸せだったと云うシーンが印象的。

「いちご同盟」は「僕って何?」の三田誠広の作品。
正直云うと、あまりにも陳腐な設定なので
「マジか。」と思いました。
主人公は目立たないピアノを愛する文化系の高校生。
同じ学校の野球部の四番でエースの人気者に
いきなり声を掛けられる。
今度の試合をビデオに撮って欲しいとの事。
難病の幼馴染の美少女に見せるためだと。
1990年の作品だと云う事を考慮しても
この設定はベタだったんじゃなかろうか。
ところが物語が進むにつれて、
主人公の心の闇の部分が見えてきます。

「螢川」は芥川賞受賞策。
文庫本には表題作の他に「泥の河」も収録。
個人的には「泥の河」の方が印象に残った。
戦争の爪痕の残る大阪が舞台になっています。
安治川近くのうどん屋の子供が主人公。
川に浮かべた舟の上で生活する姉妹と友達になる。
舟の上では母親が客を取っていて…。

「神戸・続神戸」は何とも不思議な物語でした。
西東三鬼は新興俳句運動で活躍した俳人で、
この作品は自叙伝らしい。
彼は大戦の頃、神戸のホテルで暮らしていたらしく、
そこの住人たちのエピソードを書いています。
語り口が飄々としているだけに、逆に生々しい。

「女生徒」の角川文庫版は太宰治の女性語りの作品を
十四編収めた構成になっています。
女性の心理を描けているのか、私には分かりません。
更に"当時の女性の"心理となると、分かろう筈もない。
今の物差しで測ると違和感があり、色々読み誤ってしまう。
あと、読んでて気になったのは自殺がチラつく事です。

| | コメント (2)

2024/10/02

読書熱 9月末追加

■灯台からの響き/宮本輝
■花まんま/朱川湊人

「灯台からの響き」は宮本輝の2020年の作品。
妻を失ってから中華そばの店を休業している主人公。
彼の蔵書「神の歴史」に挟まっていた一枚の葉書。
物語がゆっくりと進行していきます。
今どきの小説にありがちな過剰な波風は立たず、
日常感を損なわない程度の起伏で綴られる物語です。
スマホやグーグルマップなども出てくる現代の設定なのに
どこかノスタルジックなんですね。
何となく小津安二郎の映画を観てるような…。

「花まんま」で初めて朱川湊人を読みました。
直木賞受賞作品です。
私と一歳違いの関西人なので、
出てくる昭和ネタがズバリでした。
そこにホラーなストーリーが乗っかってきたので
ちょっとビックリしました。
ネットで調べてみたところ、
朱川湊人はホラー小説で名を成した人みたいです。
この小説はホラー的要素を入れながらも、
心動かされる物語になっているのがいい。
それに昭和ノスタルジーが散りばめられていて
更にいい。

たまたまですが、この前に読んだ三田誠広も
宮本輝も朱川湊人も関西出身ですね。
だからどうって事ないですけど。

| | コメント (0)

2024/09/25

読書熱 8-9月

微熱程度の読書熱ですけど、
安定して色々読んでます。
新しい作家にも手を出しました。

■猫を拾いに/川上弘美
■小さいおうち/中島京子
■恋するたなだ君/藤谷治
■罪の終わり/東山彰良
■ぼくらのひみつ/藤谷治
■Schoolgirl/九段理江
■僕って何/三田誠広

「猫を拾いに」は短編集。
緩やかに繋がっているものもある。
日常を描いている作品だと思って読み始めたら、
途中で近未来の話だった事に「おっ。」となる。
SFだったとしても繊細でサラッとしたタッチは変わらず。

中島京子は初めて読みました。
「小さいおうち」は直木賞受賞作。
第二次世界大戦前後の小さいおうちと人々の話。
その家でお手伝いさんしていたタキの手記の形で進行するが、
それを親戚の若者が読んでいると云う設定が面白い。
今の人が俯瞰的に"学んだ"戦争と、
当時を生きていた人のリアルな感覚との差が
ものの見事に浮き彫りになっています。
いい作品でした。

「恋するたなだ君」は藤谷治らしい恋愛(?)小説。
男が女を好きになるきっかけが一目ぼれ。
好きになる経緯を描くのが小説の醍醐味なのに、
車で一瞬見かけた女性に運命を感じ、
追い掛けていくドタバタ劇の方に主眼を置いている。
その展開がこれまたとんでもない。
きっとついていけない人もいるんじゃないかなー。

東山彰良の「罪の終わり」は
傑作「BLACK RIDER」のエピソード0的な作品。
後の世界で神格化されている人物が
如何にして神になったかを描いています。

「ぼくらのひみつ」は藤谷治ファンの私でも
かなり無茶な設定に馴染めずに終わりました…。
午前11時31分の世界に閉じ込められた男。
俗に云うタイムループモノですが、
一分間と云う短さが設定を分かりにくくしている。
一日のタイプループだと、寝て起きたらまた同じ日、
みたいな分かりやすい繰り返し感があるけど、
一分だとそうもいかない。
途中からヒロインが登場して、
同じループの中で一緒に行動するようになるが、
どういう事なのか今一つよく分からないままでした。
一つ潔いと思ったのは、辻褄合わせの説明をあまりしない事。
引き合いに出して申し訳ないけど
「コーヒーが冷めないうちに」って小説を読んだ時、
タイムスリップの設定を成立させるためのルールを
厳密に設定してるのが、説明臭くて鬱陶しかった。
藤谷治はその辺りは読者の想像に任せてしまう事で
突拍子もない展開を自由に描こうとしたんだと勝手に推測。
そうだとしても、やっぱりずっとモヤモヤでした。

初めての九段理江。
「あの本、読みました?」に出てたので興味を持ちました。
「東京都同情塔」で2023年下期の芥川賞を獲る前に
2021年下期に「schoolgirl」が候補作になっていたとの事。
太宰治の「女生徒」に刺激を受けた作品らしい。
物語の中でも「女生徒」が重要なキーになってくる。
母親はyoutubeで社会派の情報を発信している娘を理解できない。
母親を"文学に毒された可哀想な人"だと思っています。
大まかには、この親子の距離を描いた作品。
個人的に母親とカウンセラーとのシーンが印象的でした。
この辺りからこの母親がちょっと変だと感じ始めた。
もう一つデビュー作の「悪い音楽」も収録されていて、
こちらの方が気持ちが動きやすい展開。

1977年の芥川賞作品「僕って何」。
学生運動華やかなりし頃のリアルな学生像が描かれてます。
主人公は強い意志で運動に参加したのではなく、
知り合いに誘われて足を踏み入れる事になります。
なんか大江健三郎の「セヴンティーン」と入口が似てる。
しかし、それと大きく違うのは、
主人公が思想に嵌る訳でも、運動にのめり込む訳でもない事。
ホントに「僕って何」な展開なのです。
この作品を正しく理解するには、時代の空気を知っていないと
無理なのかもしれません。

| | コメント (2)

2024/05/28

5月 読書熱少し上昇。

5月結構読んでますね。1つ追加。

■町長選挙/奥田英朗
精神科医伊良部一郎シリーズの三作目。
今作は実際のモデルからアイデアを膨らませた三作品と、
全く毛色の違う離島での物語が収められています。
前者の方は誰が読んでもモデルになる人物が分かります。
人気プロ野球チームオーナーのナベマンこと田辺満雄、
IT社長でラジオ局の買収を企てたアンポンマンこと安保貴明、
いつまでも美しい元歌劇団トップの白木カオル。
それぞれが世間に晒されるストレスから心を病んでいて、
そこに伊良部医師が絡んでくる。
ストーリーテラー奥田英朗の巧さが発揮されています。
表題作の「町長選挙」は離島で繰り広げられる選挙戦の話。
島を二分し、札びらが乱れ飛びます。
そこに二ヶ月の期間限定でやってきた伊良部医師が絡んで
火に油を注ぐ展開になっていきます。
個人的にはドタバタ過ぎるのであまり好みではなかったです。
逆にエンディングはリドルに逃げず、あっと云わせて欲しかった。

| | コメント (2)

2024/05/27

読書微熱、やや上昇中。

図書館の自動貸出が便利なので、
少し読書熱が上昇中。

■空中ブランコ/奥田英朗
奥田英朗は好きな作家です。
ストーリーテラーとして魅力的です。
中でも連作短編が巧い印象があります。
この作品は精神科医伊良部一郎シリーズの二作目で、
直木賞を受賞した作品。
急に空中ブランコで失敗するようになったサーカス団員や
まともにボールが投げられなくなった野球選手、
義父のカツラを引っぺがしたい衝動に駆られる医者等、
ちょっとしたきっかけで心を病んでしまった人々を
伊良部医師が治療していく話なんですけど、
この男が規格外の変人。
まともな治療などほとんどしていないし、
時には犯罪すら犯します。
それでも結果的には患者の心の障壁を取り去って
病気を治してしまうんですね。
アニメ化もされているようですが、
画像を見たところ、原作のイメージとは大きく異なる様子。
そう云えば、一作目の「インザプール」も映画化されてましたが、
こちらも監督の三木聡の色に染め直されてる感じでしたね。

■誰にも見えない/藤谷治
私はかなり藤谷治の作品を読んできますが、
「船に乗れ!」の次に来るくらいの名作ではないかと思うのです。
少女の日記の形で物語が進む。
日記ならではの心の吐露、迷い、葛藤などがリアルに綴られる。
個人的には母親の駄目さ加減が絶妙で好きです。
ネタバレになるので書きませんが、最後の方もかなりいい。

■Phantom/羽田圭介
長期株式投資で利益を生み出し続ける理想のシステムを
構築しようとしている女性が主人公。
恋人はそれには否定的な考えを持っていて、
生きた金の使い方をしなければ意味がないと説く。
しかし、その彼が怪しいセミナーに傾倒していき、
カルト宗教まがいの集団の中に飲み込まれて…。
「豊かさとは何だろう。」
みたいな分かりやすい教訓も含まれているが、
「人生のどの時点が幸せだったら、いい人生なんだろうな。」
と、読みながら考えてしまいました。

■飢餓同盟/阿部公房
図書館で借りた本の合間合間に、少しづつ読み進めた蔵書。
高校時代以来の再読になる筈なんですが、全く記憶になし(笑)。
理想の社会を作るため革命を起こそうと企てる主人公。
しかし、高い理想とは裏腹に、計画はかなり杜撰。
集められた飢餓同盟のメンバーも全く結束力がないし、
能力がどれだけあるのか分からない人々。
絶対に上手くいく筈がない。で、案の定…。
廃車になったバスで生活する人が出てきますが、
安部公房の描く時代の空気感が好きです。

■コロナと潜水服/奥田英朗
これは怪談と云っていいんでしょうか。
霊にまつわる短編集ながら、どれも怖くない。
「パンダに乗って」はホロリと泣かせる秀作。


ちょっとこのペースでは読めない事情が出てきたので、
一気に熱が冷めそうです。

| | コメント (2)

2024/05/10

読書微熱 2024年5月

一週間で一冊くらいのペースで
ゆっくり読んでいます。
意識してそうしている部分もありますが、
通勤時間が乗り換えで寸断されるので、
なかなかペースが上がらないのも一因。

五月に入って読み終わった二冊。

■鷺と雪/北村薫
北村薫は気になっていたけど
これまで読んでなかった作家の一人。
1947年生まれの男性でした。
てっきり湊かなえとか三浦しをんと
同年代の女流作家だと思い込んでました。
しかも「鷺と雪」は三部作の最終作。
事前のリサーチ不足でした。
しかし、連作の短編構成なので、
三作目から読んでも楽しめました。
大きなジャンル分けだと
推理小説なんでしょうね。
昭和初期の上流階級の人々の物語で
血生臭い殺人事件が起こる訳ではなく、
人間関係に於ける謎が
解き明かされていく感じですね。
夢中になって読んでいくタイプではなく、
淡々と読んで、じわじわくるタイプの作品。
しかし、「獅子と地下鉄」と「鷺と雪」は
半ばで私の謎解きが図星だったので、
ミスリードさせようとする作者の意図が
見え見えになってしまったのが不運でした。
逆転しますが、一作目、二作目も読んでみたい。

■ミスサンシャイン/吉田修一
吉田修一は横道世之介シリーズが良くて
これまで十六作品を読みましたが、
合う合わないが大きかったです。
ミスサンシャインは、私には合う作品でした。
架空の大女優の家の荷物整理に雇われた主人公が
昔の資料を紐解いたり、
親密になって昔の話を訊いているうち、
大女優至る人生が浮き彫りになっていく。
親子どころか孫ほど年齢の違う二人に
ありていの恋愛ストーリーは当て嵌まらない。
主人公の恋愛や失恋も絡み合って、
先の見えない展開がどきどきでした。
実在の映画関係者等が実名で登場し、
架空の物語が編み込まれて行く。
巧みではあるが、ちょっとあざといかな。
とは云え、登場人物がみんな魅力的で、
ホロッとしたし、読後感も絶妙でした。

| | コメント (2)

2024/04/23

読書微熱。

読書微熱

神戸市立図書館の予約図書自動受取機のお蔭で
最近また本を読み始めました。

ここ数年、節操なく読み散らかしていましたが、
その中で好きになった作家がいます。
これからはその人たちの作品をじっくりと
読んでいこうと思います。
そして、気が向いたら、感想もちょこちょこと。

さっそくこちらの作品から。

■燃えよ、あんず/藤谷治
下北沢の本屋フィクショネスに集う人々の物語です。
作者が実際に経営していた同名の本屋が舞台なので、
実話っぽく語り始めていますが、恐らくフィクションでしょう。
ある程度モデルになっている人物はいるのかもしれませんが。
登場人物の中で一番厄介で、存在感を出しているのが由良です。
こう云うちょっといかれた価値観の人物を描くのがうまい。
変わった本屋に変わった人々が集まるのは、世の常なんですね。

■どこから行っても遠い町/川上弘美
緩やかに繋がった短編集です。
一軒の魚屋からスタートする、町の住人の人間模様。
川上弘美の描く世界には様々な愛の形が登場します。
満たされている人はいない。
諦めや馴致や妥協の中で生きている感じがします。
ただ、心に穴を空けるためか、やたらと死が絡む。
ちょっとやり過ぎかなと思いました。

■とんこつQ&A/今村夏子
タイトルから勝手にエッセイ集だと思っていたら短編集でした。
やっぱり天才です。
表題作の「とんこつQ&A」は中華料理店で働き始めた女性の話。
人と接するのが苦手で「いらっしゃいませ。」すら云えない。
それを克服して成長していく姿を描く感動の物語…、
などと云うありがちな展開になる訳がないんですね。

| | コメント (2)

2024/04/18

読書習慣、再び。

引っ越して、図書館が不便になりました。
隣駅の坂の上にあって、駐車場も少ない。
車を停められずに引き返してきた事も。
そのせいで私の読書熱は強制冷却されていました。

しかし、神戸市立図書館にはこんなサービスが。
Dsc_2012
無人貸出し機です。
正式名称は予約図書自動受取機。
地下鉄三宮花時計前駅の前にあります。
ネットで予約してここに取りに行く。
地下街に入れる時間帯ならいつでもOK。
もっと早く知りたかった。

私にとって三宮は通勤の乗り換え駅なので
会社帰りに受け取ることができます。
ちょっと寄り道になりますが、
さんちかをぶらぶら歩くのは悪くない。
阪急百貨店の全国お取り寄せ銘菓を
チェックするのにもちょうどいい。

以前のように爆読はしないと思いますが、
読書習慣が戻ってきそうです。

| | コメント (6)

2019/10/17

読書熱10月前半。

「羊と鋼の森/宮下奈都」
「再会/横関大」
「儚い羊たちの祝宴/米澤穂信」
「四日間の奇蹟/浅倉卓弥」
「橋ものがたり/藤沢周平」
「ガール/奥田英朗」
「テロリストのパラソル/藤原伊織」

今回の中では「橋ものがたり」がよかった。
落語の人情噺を読んでいる様だった。

その他はまあまあでした。

「四日間の奇蹟」は繊細な人間模様かと思いきや、
途中からのよくあるSF的な展開についていけず。

「テロリストのパラソル」は直木賞&江戸川乱歩賞なので、
大きな期待をして読んだのですが、肌に合わず。
登場人物全員、ええかっこしいの喋り方で
主人公もヒロインもヤクザも浮浪者も
みんなセリフでキメたがってる。
「一つだけ忠告しておく。」って何回も出てくる(笑)。
終盤、会話ベースでしらみ潰しにフラグ回収してる感じが強い。

| | コメント (0)

2013/11/23

お薦めしない本。

実はこの記事、下書き状態で半年以上アップしようかどうか迷ってました。
人の本を悪く書いているので気が咎める部分もあるのですが、
半年以上経って読み返しても、印象は変わっていないので、
酔った勢いでアップします。
一個人の意見として、読み飛ばしていただければ、と思います。

-------------- 8< ---------------------------- 8< --------------

飛行機での移動時間用に適当に買った本。
P1220421_r
タイトルにつられて買いましたが、結論から云うと、
殆ど学ぶものがない本でした。

最初から最後まで「写真は自由に撮ればいい。」ってスタンス。
それは良いんですけど、自由と云ってる割に意外と料簡が狭い。
自分の考えに合わないものは片っ端から否定しまくってます。

「○○について、よく尋ねられます。」と云う書き出しから、
それに答える形で持論を展開していくパターンが多いのですが、
そんな都合のいい質問をしてくる人が周りに豊富にいるのが不思議です。

あと、言葉の意味を国語辞書で調べて、それを論拠にしているのも謎。

何よりも載ってる写真に魅力を感じないので、私にはどうしようもない…。

アマゾンの評価には「目から鱗。」みたいな事が書かれているので、
私の方がズレているんだろうと思いますが…。




もう一つお薦めしない本を。
P1220418_r
まず断っておきますが、私はこの人の大ファンです。
DVDも本もCDもかなりの量を購入しています。
その中でもこれはかなりぷぅな内容の本です。
第一、本人が殆ど書いていない。
大半が、がいしゅつ(なぜか変換できない)のネタの焼き直しです。
この人のファンはディープな人が多い筈なので、
上澄み液だけを掬ったような内容の本はいらないと思うのですが…。



すっかり本を読む機会が減りました。
二十歳台で小説に入り込めなくなって、エッセイ中心になり、
四十歳台で書き手の意見に最後まで付き合い切れなくなる事が増え、
老眼も影響して、本を読むのが更に億劫になっています。
最近読んでるのは感情の動きの少ない情報関係の本ばかり。
ここ数年で読んだ所謂書き物と云えば、赤瀬川原平と伊集院光くらい…。

自分は駄文を書くのが好きな癖に、人の文章には厳しい。
これを一般的には頑固オヤジと云うのでしょうか。困ったモノです。

| | コメント (4) | トラックバック (0)

2011/06/30

二つの新解さん。

ご存じな方はご存知な「新解さん」。
新明解国語辞典の事を敬愛を込めてそう呼びます。

この辞書はポピュラーな辞書でありながら、
内容的にあまりポピュラーではない妙な個性が光っていて、
それにメスを入れたのが赤瀬川原平の「新解さんの謎」。

これを10年くらい前に読んだ時は面白くて面白くて溜まりませんでした。
赤瀬川原平の本はどれも脳みその隅を擽られるような快感がありますが、
この本だけはもっとストレートな笑いに繋がる面白さがありました。

で、調べてみたら他にも「新解さんの読み方」なる本が出ていることを
つい最近知りました。
Ca3c0898

二匹目のどじょうを誰かが狙ったのかと思いきや、
「新解さんの謎」にも登場するSM嬢こと夏石鈴子が書いたものでした。
いわば新解さんのケッタイさに最初に気付いたオーソリティの作品。


期待して読みました。

ところが…。

そこそこ面白いんですが、どうもイマイチしっくりきません…。
初めて「新解さんの謎」に出くわした時の様な驚きがなくなってるからかもしれない。
「辞書なのに何やら人格が滲みだしてきているぞ。」って新鮮な感動はなくなり、
「新解さんは変わってる。」って前提で読み進めてしまうせいか、
かなり変な例文を示されても「新解さんらしいや。」と妙に納得してしまうんですね。

最初からこのネタは微妙なバランスの上に立ってたんだなと思いました。


とは云え、赤瀬川原平の切り口と夏石鈴子の切り口とでは
やっぱり鋭さが違う様な気がします。

例えばまちのヘンなものを見つけても、
それをVOWの様な下世話なネタに仕上げる人もいれば、
みうらじゅんのスライドショーみたいにサブカル色に仕上げる人もいます。
赤瀬川原平は鋭い感性でそれを芸術の域にまで高めつつも、
それでいて肩肘を張らない平易な文章で書き綴ります。

「新解さんの謎」も理屈っぽくなりすぎず、ネタの羅列に陥らず、
新解さんのヘンさ加減を浮き彫りにする絶妙の仕上がりになってるのです。

何だか「新解さんの読み方」を悪く書いてしまった気もしますが、
最近読んだ本の中では面白かった方だったんですよね。
私にとって赤瀬川原平がとてつもなく高い位置にあるので、
比較するとこうなっちゃったのでした。すみません。

| | コメント (2) | トラックバック (0)

2011/04/19

写真+文章の憧れ。

世間はすっかりツイッターですが、
私はあんまり興味が持てず、blogな日々です。

その理由について、前にも書いたかもしれませんが、
自分の思ったこと瞬間的に書くのが苦手で
色々と頭で考えを捏ね繰り回した後、
言葉選びや行変えの場所など何度も推敲しないと
納得できないし、不安になってしまうんですよね。

それともう一つblogが好きな理由として
写真と文章の組み合わせに
憧れのようなものがあるからかもしれません。
って云うか、この人への憧れかも。
P1080190
赤瀬川原平。
前衛芸術家であり、芥川賞を受賞した作家でもありながら、
柔らかい頭と自由な視点で日常を切り出す路上観察の創始者。
この人の自然体の観察眼がとてもいいんですよねぇ。

マチの写真を撮ってコメントを添える形のモノは
VOWやみうらじゅんのスライドショーや素人のblogなど、
探さなくても世間にいくらでも見つかりますけど、
その多くが"笑い"を求めるモノなんぢゃないでしょうか?
ケッタイな看板や変な建物も確かに面白いです。
でも、普通なら見過ごしてしまう様なモノに目をとめ、
そこから色んな"気づき"を見つける面白さがいいんですよね。

この「老いてはカメラにしたがえ」の中にこんな事が書いてあります。
「頭の悪い人ほど考えたがる。
私も頭が悪いので、考えずに感じる様にしている。」

要は色々頭で捏ね繰り回してたんでは駄目って事なんですね。
そんな境地にはまだまだ至りませんが、だからこそ憧れなんですね。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2009/12/02

のはなしに

今から一年前に取り上げた「のはなし」の続編を読みました。
タイトルは「のはなしに」。宝島社です。
Nohanashini_2
やっぱり伊集院光は頭の回転や切れ味が桁外れだと思います。
テレビの伊集院を白伊集院、ラジオを黒伊集院だとすると、
文章の伊集院はごまだら伊集院ではないでしょうか。
語り口はラジオほど激しくないけど、内容はかなりディープ。
伊集院光を好きな人はもちろん楽しめますし、
伊集院をテレビでニコニコ笑ってる雑学系デブキャラ程度に思ってる人には
猫の爪カッターでシュッと切られるくらいの衝撃はあるでしょう。

失礼ながら、私はこの本をトイレに置いております。
一話一話が短いので、トイレで読むには最適の本なのです。

但し、読んでるうちに、伊集院の話が誘い水になって
自分の過去の記憶を辿ったり、妄想を膨らませたりしてるうち、
かなりの時間が経ってたりするので要注意です。

間違いなく、いい本です。

| | コメント (2) | トラックバック (0)

2008/12/21

「い」の話から「た」の話まで。

集院光ですよ、伊集院光。
私が本当にTalentがあるなぁと思うタレントの一人。
この人の頭の回転のベンチマークを取ったら
インテルのCore i7を凌ぐのではないかと思う。

で、ホームグラウンドのラジオもさることながら
文章でもかなりの才能を発揮してるんですね。

Ca3c0003「のはなし/伊集院光(宝島社)」
2001年から5年間に渡って
携帯のメールマガジン向けに
週3回(!)配信していたエッセイを
一冊に纏めたモノ。
実際には全部で約750本もあるらしく、
今回はその中の80本を厳選して
「あ」から「ん」まで並べた、って趣向。

たしかに語り口はラジオでの喋りに似てるけど、
読み物ならではのしっかりしたプロットが
知的で落ち着いた印象を与えてます。
いい文章だなぁ…。

特に印象的だったのは「理科室」の話。
自分は化学調味料に敏感だ、って事を
グルメを気取らずに語っています。
なぜ敏感になったかと云うと―――

子供の頃、バーベキューに出掛けた折、
親父がはりきって焼きそばを作った。
しかし、最後の仕上げに味の素を振った時、
キャップが外れて一瓶分の白い粉がドサーッ。
台無し…。
いたたまれない空気が漂う中、少年時代の伊集院光は
「旨いよ!」って、一人で焼きそばをバクバク食べた。
口の中はなぜか理科室の味で一杯になった。
それ以来、化学調味料の入ったモノを口にすると、
その日の事を思い出す。

―――実に繊細な少年の気持ちが伝わってきます。
それと同時に味の素の気持ち悪いヌルつきが口に広がります。
実は私もこれに近い経験をしてるんです。
とはいえ、伊集院の様に胸がちくっとする話ではありませんが。

中学の頃、友達の家で「被害者は誰だ」ゲームをやったんですね。
どんなゲームか、大抵の人のなら知ってると思いますが、
例えばコーラの入ったコップの中に、一つだけ醤油が入ってて、
それを飲んだヤツを当てる、そんな他愛ない遊びであります。
で、私に当たったのが味の素水。
塩や醤油よりは平気だと思って、何食わぬ顔で一気に飲みしたら、
口の中から胃袋までを得体の知れない気持ち悪いベールが覆った。
すぐにトイレで吐いた。そして、家に帰って寝込んだ。
それからしばらくは何を食べても吐きそうになりました。
今でもその時の感覚が残ってて、
化学調味料の沢山入った食べ物を食べると気分が悪くなります。
嘘だと思ったら試してみて下さい。
明日から味覚が変わります。
それで好きなものが食べられなくなったって文句云われても
困りますけど…。

実は最近、これに新たに加わったトラウマ調味料があります。
ん白加水分解物です。
これは加工食品に加えられている事の多い調味料で
たん白質を主に塩酸で分解してアミノ酸を取り出したモノ。
一般スーパーでコレを単体で売ってる事はまずありません。
でも色んな食品の原材料として広く使われています。
仕事の関係でこれの溶液を嘗めてみたんですね。
妙に旨い水でした…。
思わず中学時代のあの事件を思い出してしまいました。
更にこの溶液には独特の匂いがあります。
とは云っても、不快な臭いではありません。
云うなれば、駄菓子屋の安い煎餅の匂い。
それ以来、この手の匂いにも敏感になってしまったのです。

つい先日の出来事。
私が名古屋で好きなラーメンチェーン福に行きました。
ここのラーメンは素朴な味なんですけど、
普通の醤油ラーメンタイプでもなく、支那そば系でもなく、
個性があってとても好きなのです。
無化料などのこだわりのお店ではなく、庶民的な感じ。
ラーメンライスが無茶苦茶合う。
私の中でラーメンライスに合うラーメンとしては
新潟の万人家と肩を並べて学校に行くくらいです。
で、このラーメン福、名古屋近辺で数店FC展開をしてるので、
見つけたら吸い寄せられるように、ついつい入ってしまう。

ところが、先日入った店はスープのバランスが明らかに違った…。
旨み分が濃すぎるのです。
私の中の味の素センサーとたん白加水分解物センサーが
過敏に反応し始めました。
これはマズい…。気分が悪くなる可能性がある。
私はヌルくなるのもかまわず、コップの水で薄めました。
そしたら全体の味が薄くなってしまったので、
胡椒と唐辛子を大量に加え…、
全く別物のラーメンになってしまいました(涙)。

三日後、行きつけの本店でリベンジしました。
やっぱり美味しかったです。

FC展開って味の統一も難しいんでしょうね。

Pap_0005


P.S. この記事を寝不足&二日酔い&風邪の状態で書いてたら、
本気で気分が悪くなり一日寝込んでしまいました。
気分が冴えない時は気分の悪くなる様な事を考えないようにしましょう。

| | コメント (4) | トラックバック (0)

2008/11/09

i-縁奇縁 その2

i-縁奇縁の続きです。

今回、マイクメリロに私のblogを紹介してくれた横井さんには
色々お世話になりました。

横井さんは名古屋にお住まいの写真家で
本も出版されていると云う事がわかりました。


Neko_italiaと云う事で、
さっそく写真集を購入しました。
イタリア猫の日曜日/横井一夫(風媒社)

イタリアの町並みと猫と人。
さりげなく切り出された風景から
イタリアの雰囲気が漂ってきます。
って、行った事ないけどー(笑)。

この写真集を眺めてると、
猫っていいよなぁ、って思ってしまう。
今度生まれ変わるなら、
イタリアの猫になりたい。

と、らしくもない事を書いてみたり。


毎日、頑張ってる人に、のんびりみてもらいたい写真集でした。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2008/10/13

私の読書空間 その2

前回に引き続き、書籍ネタを。
今回は秋と云う事で芸術関係のモノを集めてみました。


■20世紀音楽 クラシックの運命/宮下誠(光文社新書)
20seki_ongaku
タイトル通り、20世紀のクラシック音楽について書いた本です。
筆者は私より3つ上の大学の先生なんですけど、
音楽関係の人ではないのですよ。
文学部の教授ですが、専門は西洋絵画史みたいです。
ぱらぱら読みしても、音楽理論とかに疎い人だとわかります。
例えばどれくらい疎いかと云いますと、
-------------- 8< --------------
ちなみに機能和声とは、バッハ以後の音楽家たちによって使用される基本ツールで、いわゆる「ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ・ド」に基づく和声のフォーマットである。ピアノの鍵盤を思い出せばよい。白鍵の連鎖は全音、黒鍵の導入によって半音が生まれる。
-------------- 8< --------------
と、このレベルです。
理論的な部分を避けて通りにくい20世紀の音楽を
専門外の人がどのように論じるのか興味津々でした。
単に感覚だけで聴いてる私に近いかなー、と。
結論としては「なるほど」と思う事も多少あったものの、
わざわざ読む必要はなかったかなぁ、って感じ。
とにかく一番訳がわからなかったのは、
「わかる音楽」と「わからない音楽」で論じてる点。
そんなん、自分の匙加減やん。
大学の先生なので論文調でおカタく論じてますが、
考えてみたら、ジャズ喫茶のオヤジの書いた本と大差ないかも。
だもんで、20世紀音楽のイノヴェーターであるドビュッシーについては
僅か2ページちょいしか触れていないにもかかわらず、
ヒンデミットには37ページも割いてます。
どうやらオペラ好きの様で「今日のニュース」と「画家マティス」と
「世界の調和」の解説に20ページ以上も書いてたりする。
それから年代をしつこく書いているのが気になります。
時代背景などから読み解こうとしているのはわかりますが、
どうも深読みして当時の世相や思想と結び付けすぎてる感じです。
また、喩え話になると、自分の得意な美術関係を引き合いに出します。
それって、全然わかりやすくなってないと思う…。
色んな糸口で音楽を解説&評論してるんですけど、
「この人、純粋に音楽の面白さを感じてるんだろうか?」
とすら思ってしまいました。
うーん、珍しく辛辣モードになってしもた…。


■わたしのラヴェル/諸井誠(音楽之友社)
My_ravel
ずっと昔に買って愛読してた本です。
発行日を見たら昭和59年5月10日の初版本でした。
作曲家諸井誠は文章も上手で沢山の著作があります。
この本はいわば音楽の専門家である諸井誠が
しっかりとした解説を交えながらも、
一ファンとしてラヴェルを賛美しまくる内容です。
実に気持ちいい(笑)。
これを読むと
「ラヴェルを超える作曲家はいないっ。」
とさえ思ってしまうんですねー。
ただ"クープランの墓"について触れられていないのが
ちょっと残念です。


■ジャクソンポロック/レオンハルトエマリング(TASCHEN)
Pollock
シュルレアリスムとか抽象の絵は大好きで
カンディンスキーとかロスコーとかミロとかマッタとか、
絵をじっと観てると、どんどん嵌り込んでいくんですけど、
ポロックの絵はどうも体質に合わないみたいです。
同じアクションペインティングでも白髪一雄なんかは
絵の前で動けなくなったりした事があったので、
ああ云う手法が嫌いな訳ではありません。
でも、ポロックの絵からは何も伝わってこず、
アクションペインティングに"逃げた"感じがしてました。
これはあくまでも門外漢の私の感想に過ぎません。
でも、この画集の解説部分を読み進めていくうち、
私の直観があながち間違いじゃない様な気がしてきました。
ポロックって最初っからドリッピングをやってた訳じゃなく、
普通に筆を使って絵を描いてたんですね。
しかし、彼の描く絵は色んな人の影響を出まくってるんですよ。
意図して絵を描こうとすると、誰かの作品に似てしまう。
彼がそれらの影響から脱するためには
自分の意思から切り離して絵を描く、つまり、
偶然のウェイトを高める必要があったんじゃないかなぁと。
でも、読む前より、ポロックの作品が理解できた気がします。
「失敗作に終わるのは、絵との接点を失った時だけだ。
それ以外の時は、純粋なハーモニーが生まれ、
容易に与えたり、与えられたりでき、よい絵ができ上がる。」
これはポシビリティーズ誌に彼が書いた言葉です。
Pollock_2


今回はこの辺で。

| | コメント (2) | トラックバック (0)

2008/10/05

私の読書空間

インドアでの趣味に偏ってる事もあって、
読書をする機会が極めて少なくなりました。

私の唯一の読書スペースがここ。
Toilet_library
トイレです。

なので、気軽に読める本やあらすじのない本が中心です。
そんな中から幾つか紹介してみたいと思います。


■江戸の料理と食生活/原田信男(小学館)
Edo_no_ryori_to_shokuseikatsu
これはとても価値のある一冊です。
価格は3000円近くしますけど、決して高くないです。
江戸の食文化や庶民の暮らしぶりを
きっちりした時代考証に基づいて紐解いています。
文献や当時の絵などをふんだんに盛り込み、
読みやすい文章で解説してくれています。
楽しい楽しい。
例えば「寿司と鰻」のページはこんな感じ。
Sushi_to_unagi
その他には「上方の漁師がつくった江戸の味」
「日本の味の基礎となった『だし』の進化」
「江戸の一日はご飯を炊くことから始まる」
「菜の主役に活用された豆腐」などが面白かったです。


■落語の歴史/山本進(河出書房新社)
History_of_rakugo
オビに書いてある
「ねえご隠居さん、落語ってぇのは、いつからあるんですかね?」
ってコピーからもわかる様に、どちらかと云えば江戸中心かな。
と云うのも上方落語の昔の文献が乏しいのだそうで。
うーん、ちょっと残念。
落語のルーツは京都の安楽庵策伝上人(1554~1642)の書いた
「醒睡笑」にあると云われています。
この中に「子ほめ」「牛ほめ」「平林」「寝床」など、
今でも頻繁に演じられている落語の原型があるんだそうで。
落語家の出現は三都ほぼ同時期だったらしく、
1680年代に京都では露の五郎兵衛が、
大阪では米沢彦八が、江戸では鹿野武左兵衛門が、
辻噺を興行し始めたとの事です。
そして、江戸、明治、大正、昭和、平成と時代を経て、
盛衰していく落語の歴史が文献を交えて紹介されています。
中でも吉本興業の落語軽視と第二次世界大戦の影響で
滅びかけた上方落語を四天王が復活させるところは感動的。
そこに載ってる桂春團治の写真が無茶苦茶カッコイイ。
隣の桂米朝は愛嬌たっぷり。仕草からみて「愛宕山」かな?
Beicho_harudanji


■広告キャラクター大博物館/ポッププロジェクト編(日本文芸社)
Koukoku_kyara_daihakubutukan
見ての如くのゆる~い本です。
でも、内容的にはかなり豊富な情報量ですよ。
例えば森永のエンゼルマークについてはこんな感じ。
Morinaga
最初の頃のエンゼルは妙にリアルですなー。
って云うか、右上の最新のデザインだけが垢抜け過ぎ(笑)。
結構しっかりした資料だと思いません?
各企業を取材した努力に感服致します。
中には倒産したミツワ石鹸の画像なんかもあったりします。


もっと色々紹介しようと思ってたけど、
長くなってしまったので、この辺で。

| | コメント (4) | トラックバック (0)

2008/02/11

二つの酒マン

風邪が小康状態セーラになったので(…おやじギャグだ)、
寝間から起き出して、音楽部屋で軽いブラジル音楽を聴きつつ、
マンガ2作品を読んでました。
どちらも酒に関係するマンガです。

1つは「Barレモンハート/古谷三敏(双葉社)。
Lemon_heart

「気持ちがすごくあったかい!!」って書かれている様に
一つのバーでの出会いや別れを描いた作品。
…何ですけど、巻を重ねていくうち、次第に薀蓄比率が上がり、
物語が強引になってるところがありますね。
パターンとして、ある悩みを持ったお客が入ってきて、
マスターがある酒にまつわる物語を話しながら薦めると、
「おいしい。私もこのお酒の様に云々。」って感じで目の前が開け、
幸せになりましたとさ、って話が多いです。
きっとお酒の文献を調べて話を作ってるんでしょうね。
あと、果たしてこのバーが良いバーかどうかって話も。
マスターがタラタラ薀蓄をのたまい、
客を試すような酒の出し方をしたりします。
知ったかぶりのお客にワザと不味いカクテルを出した事も。
と、悪口を書いてしまいましたが、勉強になるし、面白い。
これを読むとお酒を呑みたくなってしまいます。


もう一つは「酒のほそ道/ラズウェル細木(日本文芸社)」
Sake_no_hosomichi

ラズウェル細木と云えば、
ジャズ批評で「ときめきジャズタイム」って
マニア向けマンガを描いてるマイナーな漫画家…、
って印象だったんですけど、
気が付けば、「酒のほそ道」で人気漫画家になってました。
このマンガの優れているところは、こだわり過ぎない事。
あ、こだわっては、いるんですが、グルメマンガとは違って、
薀蓄まみれにしていないところが良いです。
主人公岩間宗達のこだわりはあくまでも自分ルールであって、
そのヘンコさが酒呑みの共感を生んでいると思います。
薀蓄役には前田課長ってキャラを作り、
酒の席で薀蓄を云うヤツを滑稽に描いております。
いつも一緒にいるかすみちゃんとの関係も仄かでいい。
こんな酒呑み女友達が欲しいなぁ、と思う今日この頃。


こんなマンガを読んだもので、気が付けば、片手にお酒が。
ウィスキー呑んで、カクテル呑んで、ほろ酔い気分に…。
小康状態セーラになったのをいい事に(しつこい)、
近所のバーCASKを目指して出掛けました。
しかし、財布には2000円。
これではさすがに心細いので銀行に寄ったら、
お休みではないですか。
きっと神様が呑ませまいとしているのだと思い、
大人しく家に帰る事にしました。

と、これで止めれば良かったんですが、
マンガの続きを読んでたら、また呑みたくなってくる。
家にお酒がたんまりあると云うのも考えものです。
結局、部屋呑み再開。
あれこれ呑み散らかし、最後作ったカクテルがコレ。

Knock_outジン20ml
ドライベルモット20ml
ペルノ20ml
クレームドメンテ(ホワイト)1tsp

ペルノのアニス香とミントの組み合わせは
好みが分かれそうです。
私はあまり口に合わず、
この一杯でダウンしました。
翌朝も体調が悪いです。

カクテルの名前は"ノックアウト"。

レモンハートみたいな展開だ…。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007/09/08

いつまでも読み終われない本 その2

Tom_in_a_midnight_garden子供の頃からずっと
読み終われない本があります。
「トムは真夜中の庭で」、
フィリパピアスの名作児童文学です。
十三時を告げる古時計に誘われて、
トムがおそるおそる夜の庭に出てみると、
ある筈のない情景が広がっていた…、
ってファンタジックで少しSFチックな物語。
幻想的な雰囲気が印象的で
今でも色褪せずに頭の奥底に残ってます。

でも、実は最後まで読んだ事がない。
いつも途中で挫折してしまう。
スケートのシーンの印象があるので、
九割方読んだ事はある筈ですが、
完読した記憶は全くありません。

原因は翻訳の読みにくさと
子供が読むには少し難解な内容のせいかな?

で、久々に読みたくなったんですが、
当時の本は実家に置きっぱなしなので
アマゾンで買い直してみました。
すっかり軽い装丁になってしまってます。
箱入りハードカバーの本を開くのと、
ちょっと最初の心構えが違うなぁ…。

さて、今回は読み終われるだろうか。

| | コメント (2) | トラックバック (0)

2007/08/26

食べ物の本

食べ物に関する本は集めてる訳ではないんですが、
何の気なしにぶらぶらと本屋に入った時、
最終的に買ってるのは食べ物の本だったりする事が多い。
料理本も買うけど、食材や食文化に関する本も買う。

って事で、手元にある料理以外の食べ物の本を
ちょっと取り上げてみます。

Shokuzai
■オールフォト食材図鑑
/荒川信彦&唯是康彦
(社団法人全国調理師養成施設協会)
かなりお堅い本ですが、とても丁寧な内容で分かりやすい。
分類、食材名、学名、英名、別名、解説、調理などについて、
かなり細かい内容まで記載されています。
しかも全部写真入りなのでとても見やすい。
野菜や魚のページは見ていて飽きません。
例えばひらめのページは見開きでこんな感じ。
Shokuzai_01
思わず鮨か刺身で一杯やりたくなってきますね。
でも、肉類のページはかなりグロテスクな写真もあって、
「うえー。」と、思わずページを早送りしてしまいますわ。

Fromages
■チーズ図鑑/(文芸春秋社)
かなりマニアックなチーズの本です。
チーズが好きなので色々覚えようと思って買ったんですが、
あまりの奥の深さに挫折しました。
でも、これとてホンの一部なんでしょうね。
フランス産で95%を占める内容になっています。
例えば、コルス圏の山羊か羊の乳で作るチーズ、
ブロッチュのページ。
Fromages_01
右下の4つの写真は
・パリ市のチーズ店のブロッチュ(左上)
・アジャクシオ市の朝市のブロッチュ(右上)
・リヨン市の市場のブロッチュ(左下)
・サント=モール町の朝市のブロッチュコショウまぶし(右下)
だってさー。って云われても、ねぇ(笑)。

Herb
■ハーブ大全/リチャード・メイビー(小学館)
これは買ったのではなく、会社で廃棄されかけてたのを、
貰ってきたモノです。
オールカラーでハーブの全てを取り上げた専門書。
ハーブの歴史に始まり、種類、使い方、育て方に至るまで、
"THE COMPLETE"な内容です。
Herb_01
♪パセリ、セージ、ローズマリー&タイム。
あ、パセリは写ってないか。
ハーブの歴史に関する章を読んでいると、
漢方薬と同じ様なものだとわかります。
科学が発達していなかった昔、試行錯誤の末、
様々な薬効が見つけられたり、
また迷信を生んだりしてきたんですね。

Dashi
■だし・調味料の技術/(旭日屋出版)
「繁昌店を作る」とある様に、割と実用的な本です。
各調味料の解説半分、レシピ半分と云った構成。
取材協力や広告協賛したメーカーのカラーが
多少出ている様な気がします。
プロの料理人の手順が解説してあるのはいいけど、
索引がないので資料としては使いにくいです。
解説ページはメーカーに取材したせいもあって
科学的な分析がどわーっと並びます。
Dashi_01
で、レシピページは一気に料理人の感覚的な世界。
Dashi_02
あまりつながりがなくて、纏まりのない内容かも。

Honda
■本多勝一のこんなものを食べてきた!
/堀田あきら&佳代(朝日新聞社)
ノンフィクション作家の本多勝一が子供の頃に
野山を駆け回って食べていたモノを漫画にしたものです。
一旦、奥の「小学生の頃」が発刊されて、
その後、手前の完全版が出ました。
本多勝一の出身の長野県の伊那地方は、
蛋白源として虫を食べる習慣があるんですよね。
少年本多勝一が木の切り株の中にごとう虫を見つけて
嬉々としてそれを食べる話が冒頭に出てきます。
「げー、気持ち悪い。」と顔を顰める人もいるでしょうけど、
そう云う環境で育てば、それが当たり前なんですね。
食べ物に関わらず、何事も自分の基準でしか物事を判断できません。
しかし、それを分かってるか分かってないかで
捉え方が変わってきますね。

Edo
■落語にみる江戸の食文化
/旅の文化研究所(河出書房新社)
落語に出てくる食べ物に興味があって、
これについてまとめた本がないか漁ってたら、
こんな本がありました。
テーマによって色んな人が書いてまして、
立派な内容になっています。
ただ落語と云うものが時代に合わせて変化する事から
それが本当にその当時の世相をあらわしたものなのか、
なかなか難しいところがありそうです。
面白かったのはお米を炊くタイミングの話。
江戸では朝に炊いて、昼、夜は冷や飯、
京阪では昼に炊いて、夜、朝は冷や飯なんだそうで。
へー、って感じですよね。
でも、落語「京の茶漬け」の中では昼の冷や飯が
残っていないと云うくだりが出てきます。
昼になくなると云う事は晩に炊いたって事だと思われますが、
これはいつの時代に作られた落語なんでしょうね?
それに主人が勤め人だったら、帰ってきて冷や飯ってのは、
考えにくいと思うんですが、どうなんでしょう?
その他、江戸前の食材、江戸の食べ物屋、道中の食事など、
興味深い切り口の論文が揃ってます。

Kyushoku
■なつかしの給食/アスペクト編集部編(アスペクト)
この手のネタは串間努だと思ってたら、
この本は全く関係ないようです。
給食の献立について、幅広い層、幅広いエリアの
情報を集めた本です。
みんな自分の時代の自分の地域の経験しかない訳で、
違う世代の違う地方の給食の献立を見るのは
とても面白いですね。
私は脱脂粉乳世代でもなく、ミルメークも未経験で、
なかなか特徴のない給食だったんですけど、
この本を読んで、米飯給食が早い地区だったと判明。
記録と記憶が一致して、ちょっと嬉しかったりします。
裏表紙のニンジンを先割れスプーンに隠して残してる写真がかわいい。
Kyushoku01

| | コメント (0) | トラックバック (0)

全巻揃わな気がすまん。

休日のぶらぶら散歩で近所のブックオフへ。
「買い物は5000円まで。」と心に決めて、
CDやら本やらを物色。

ふと目についたのが、30年も前の
「世界の名画」と云う大判の本でした。
そう云えば、昔、学校の図書館かどこかで見た様な気がする。
何となく懐かしかったのと、
並んでたのが「クレー(23)」「モンドリアン(24)」だったのと、
一冊1000円だったのとで、
「ま、トイレ本にでもするか。」と、失礼な目的で購入しました。

帰って読んでみると、なかなかいい。
大判でカラーだし、解説もわかりやすい。
更に著名人の随筆なんかも入ってたりする。
いい具合に色褪せた古い本の雰囲気は
ネットで色鮮やかな画像を検索するのと
また違った趣きがあります。

となると、私の性格からして、全巻揃わな気がすまん。

あー、やっちゃうなー、と他人事の様に思いつつ、
ヤフオクで物件を漁ると、
全巻揃いがあったりする訳です。

で、今、それが手元にあったりする訳です。

Sekai_no_meiga


| | コメント (0) | トラックバック (0)

2006/08/23

門外漢のススメ

Mongaikan
モンガイカンの美術館/南伸坊(朝日文庫)

この本は南伸坊が美術の専門誌に書いたコラムです。
南伸坊はイラストレータですから、
純粋な門外漢とは云えないかもしれません。
でも、ホンマモンの素人が書いたんじゃ面白い訳もなく、、
その点、感覚は鋭いけど、知識は薄い(フリをしてる)南伸坊は
絶妙なモンガイカンぶりを発揮しています。

知識武装や小難しい比喩で飾り立てるのではなく、
絵の本質とは関係のない「箔」をこそげ落とす論評が心地よい。

「芸術は女である。」とか「芸術はウソである。」とか
かなり強引な自論を展開しているんですけど、
それがまた云い得て妙なのです。

私の場合は「芸術」を「ジャズ」に読み替えると
納得できる事がいっぱいありました。
って云うか、無意識のうちに全部置き換えてた。

長い間ジャズを聴いてると価値観も変わってきて、
時々、何が何だかわからなくなってくる。
実際に聴いて感じてるのか、
知識と照合してるだけなのか、
聴いてた当時の思い出を重ねてるだけなのか、
レアさ加減を堪能してるだけなのか…、
音楽の純度が下がってる気がしないでもない。

モンガイカンの感覚を持ち続ける事は大切だなぁと。
是非みなさんも自分の興味のあるモノに置き換えて
読んでみてください。
知らず知らずのうちに自論を組み立て始めてて、
気が付けば、文字面を追うのを忘れてたりします。

| | コメント (2) | トラックバック (0)

2006/06/02

私の人生に影響を与えたこの一冊 その2

Viva_origami_1中学生の頃だったかに
近所の本屋で偶然見つけ
驚愕したのがこの本。
「VIVA!ORIGAMI/前川淳(サンリオ)」

子供の頃から折り紙が好きで
あれこれ折ってるうちに
大抵のものなら完成作品を見るだけで
折り方がわかると自惚れていた少年しほたつは
自分の見識の低さを思い知らされたのでした。

とにかくそれまでの本とは次元が違いました。
一枚の紙からハサミを使わず
五本の指まで再現した悪魔を折った人など
それまでいなかったと思います。
折り紙の無限の可能性を感じました。

日本にも海外にも沢山の創作折り紙作家がいて
どんどんレベルも上がってきております。
日本では子供の遊びとして広く親しまれている反面、
子供の遊び程度にしか考えてない人が多いのも事実。
外人の前で鶴を折ってびっくりさせようとしたら
向こうにステゴザウルスを折られて、
逆にびっくりしたなんて事にならないよう(笑)。

| | コメント (2) | トラックバック (0)

2005/05/24

私の人生に影響を与えたこの一冊

musashiなんて云うと、大層な文学作品や人生の指南書を挙げつらい
自らの歩んできた道に箔をつけたいところですが、
実際のところ、私の人生を左右した一冊と云えば
「むさしキャンパス記/かんべむさし(角川書店)」、
思いっきり柔らかい本です。
タイトルからわかるようにかんべむさしさんが
大学時代のエピソードを綴った青春記であります。
私はこれを高校一年の時に読んで、
大学生活に憧れを抱いたんですねぇ。
かんべさんが面白おかしく書いた話を、そのまま真に受けて、
「大学行ったら酒呑んでアホな事できんねや!」と思い込み、
不純な動機で受験勉強に挑んだのです。

その頃、私はかんべさんと同じ西宮に住んでたので、
関西学院大学を舞台にしたこの本に少なからぬ親近感を覚え、
同じ様な大学生活を送りたいと切望する様になったのです。
結局は、関学には行かず、綺麗な時計台もキャンパスもない、
しかも女の子の比率が極端に少ない地味な大学に行く事になったのですが、
それでも初志貫徹でろくに勉強もせず、アホな事ばっかりして
「人生の休憩地点」とでも云うべき4年間を過ごしました。

授業に出るよりも部室で過ごす時間が長かったのも、この本の影響。
下宿の友達の家を泊まり歩き、ろくに家に帰らなかったのも、この本の影響。
酒を呑んでわーわーやってたのも、この本の影響。…かな?
要は、ごくごく平均的なぐうたらで自堕落な学生を目指してた訳ですわ。

今読み返してみたら、結構真面目な内容も書かれてるんだけど、
そこの部分は読み飛ばして、面白おかしい部分だけを吸収してた様です。

唯一、大学四年間、日記を書き続けた事だけがプラスの影響かな?

ちなみにこの本、単行本はとっくの昔に絶版になってますが、
「上ヶ原・爆笑大学」ってタイトルで加筆再発され、
今では電子書籍としてネットで購入できます。

どこにでもある様な、でも各々にとっては特別な青春記。
明るく笑って、ちょっとホロッとくる一冊です。

| | コメント (0) | トラックバック (0)